図書館にて
私が利用する図書館は区民センターの中にある。体育館やイベントスペースなど複合的に区民が利用できる建物だ。その中の3階に図書館がある。 私はいつも室内のエレベーターを利用して図書館へ向かう。
エレベーターを待機していると、後から親子2人組がやってきた。
つまり、親子2人組と相乗りになるのだ。
その子供は5歳くらいだろう。幼稚園生の少女だ。母親は40過ぎくらいだろうか。
エレベーターを待機している間は少女が幼稚園での出来事を話している。母親はそれを適当に聞き流しているようだ。
なぜか、その日はエレベーターが降りてくるのに時間を要していた。その間は3分程だろう。子供はエレベーターが降りてくる間はずっとひたすら喋り続けている。
ようやくエレベーターが降りてきた。
子供も待ちくたびれたのか早くエレベーターに乗りたそうに扉の前で待機している。
そして、扉が開いてエレベーターの中に入った。子供、母親、私の順で入る。
子供と母親は扉の奥側に陣取り、私は扉の手前側に居る。
まだ少女は喋り続けるが、母親は聞き流す。
そしてエレベーターが作動して上昇するのと同時に一瞬、時が止まった。
エレベーターが止まったのではない。
時を止めたのは少女だ。
「ママー、これってすわるの?」
「そうだね、おばあちゃんたちが座るのかなー」
エレベーター内にちょっとした腰掛けについて話をしているのだ。
「そしたらママすわっていいよー」
「!!!」
「ママは座らなくていいのよ、ママはおばあちゃんじゃないからね」
やや怒り気味の母親。私が居る手前、母親口調だが声色が低くなったのは見逃さない。
「どうしてー??」
「いいのよー」
いいのよー、って子供の疑問に答えていないところが何より恐い。
子供は無邪気で残酷だ。
私はエレベーターの扉が開いたら一目散に出ていったことは言うまでもない。
その後のことは知らない。